01/09の日記

01:52
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同情などではない。そもそも同情なんて高尚な感情を奴に向けることほど不毛なことは無い。
加護欲、とも言えない。確かに加護欲誘う見た目ではあるかもしれないが、自分はグレミオではないので母性なんて持ち合わせていない上、おそらくひとでなしと分類される自分の性質を理解している。第一、元来のそいつを知っている時点で無理がある。
ならば何故と言われると困るが、強いて言うなら所有欲だろうか。思えば自分は幼い頃から落ちている物を拾ってくる習性があった。

ルカ・ブライトを拾いました。

「捨てて来い!」
「ちゃんと散歩も行くから」
「犬扱いか」
腕の中でもそりと動いた物体が低く唸った。
「それにしたってお前、よりにもよって何でそいつを拾って来るんだよ!」
「や、落ちてたから…」
「落ちてるモン全部お前の所有物か!どんなジャイ○ンだ!もっと、こう…犬とか猫とかなら可愛げがあったものの……」
「可愛げ、ないか?」
「あったりまえだろ!そんなブタ狂いの図体のデカ………って、なんかちっちゃくねぇ?」
「うん、まず最初にそこに気付くべきだったと思うんだ」
現在僕の腕の中に収まっているのは3〜4歳くらいの目つきの悪い幼児だった。
「なんか、死んだら縮んだって」
「縮んだ!?え、死んで?普通は生まれ変わりとか…ああもうどうつっこむんだコレェ!!カムバック一般常識!!」
「生きた化石が何を今更」
「るせぇ!歩く非常識が!」
とりあえず手に持ってるもので殴った。ガスン、と思いのほか硬質な音がしてテッドが倒れる。
ちなみに手に持っているものというのは言うまでもなくルカ(小)だ。どこに当たったらそんな音が出せるんだろう。
「痛ぇ…なんかハンマーで殴られた並の衝撃が…」
「まぁ、縮んでもルカだし」
「っつか本当にそれルカ・ブライトなのか?親戚のことかじゃ…」

「ぶたはしね」

「ルカだ」
「ルカだな」
もう一度、ルカ(小)は「ぶため」と呟いたきり、腕の中で眠ってしまった。どうやら体力や諸々は見た目通り幼児並らしい。
向き直るとテッドが複雑そうに顔を顰めていた。言うなら、面倒くせぇーっていうかマジでルカ・ブライトだって分かるだけに気色悪ぃ…ああもうコレ夢オチとかねぇかなぁ、何この人外共!みたいな。
「…フィル。全部声に出てる。それと、俺はもう何でお前は俺の心情を一字一句正確に読み取れてんのかなんて気にしねぇからな」
「うん」
「とりあえず、ソレを」
「嫌だ」
「……フィル」
「捨てない。僕が拾ったんだから僕のモノだ」
「…このジャ○アンめ」
「大体テッドだって僕に拾われたんじゃないか。拾い物の分際で所有者に意見なんて生意気にも程がある」
「っそれは…………………ん?あ、あぶねぇぇええええ!!うっかり納得しかけた!所有物扱い認めかけた!あぶねぇ!」
ちっと一回舌打ちして、腕の物を抱えなおした。
ふにゃふにゃしてて頼りない感触が伝わってくる。伝わる体温は熱いくらいだ。
血の海の中、まっさらな状態で落ちていた小さな魂。これは、僕のだ。
「譲らない。これは僕のだ」
「…フィル、それは」
「エサもやる。トイレの躾もするし」
「いや、だから」
「予防接種も受けさせるし発情期が来たら去勢手術だって」
「だからそれは犬じゃねえんだってば!!」

危うく去勢されそうになっていた小さなルカは、知らん顔で小さなあくびをした。猛獣の腕の中は意外にも暖かい。






…やってしまった感が。

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