12/21の日記

07:57
もいっちょドラグン
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両親がドラゴンに食い殺されたあの日から、俺は一切の色彩を失った。
それなのに毎夜見る夢、ドラゴンの顎からはみ出た父親の手から、足から、首から流れ出る赤い血、あの色だけはいつまでも精彩欠けずに色濃く脳裏に沁み込んでいる。

ずぶりと若干の弾力を持って迎え入れられた刃。返し刃で叩ききってやれば鮮やかに噴出す赤。幾人もの帝国兵を斬ってきた。流れる血、噴きだす血、俺のモノクロの世界に唯一残った色彩。空白の空間をその色で埋めるように躍起になって切り殺し続ける毎日。望みどおりモノクロの世界はすぐに赤に染まってゆく。
色の無い空間を赤に染め上げてゆく快感、どうしようもない高揚感、それらに突き動かされて俺は今日も殺すのだ。

「哀れな人間よ。狂っていることを自覚して尚踊り狂うか」

俺を背に乗せドラゴンが嘲笑う。ついでとばかりに火炎を撒き散らして旋回した。したでは帝国兵が赤々と燃えながら踊っている。

「まぁよいわ。どうせ我とておぬしと契約した時から共に踊ることを覚悟しておるのだ。存分に踊って見せよ」

紅いドラゴンはそう笑ってもう一度炎を噴いた。紅いドラゴンの背で赤々と燃える帝国兵の赤い血を撒き散らすことを考える。
色の無い世界が赤に染まる快感。その赤にこのドラゴンが決して少なくはない割合を締めていることがなんとなく愉快だった。

――途中で逃げ出してくれるなよ
「おぬし、我を侮るのもいい加減にせぬか。矮小な人間の分際で」

ああ多分俺は今、しあわせなんだろう。

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