GB小説U

変わったことにも気づかずに
1ページ/4ページ

最初に気付いたのは些細な事だった。

「おい銀次、首んとこ蚊に刺されてるぞ。」
「へ?」

いつものように身体を重ねようとした時に不意に見えた首の紅い跡。大きさは一センチにも満たない大きさのそれは蚊に刺されたように見えた。

「ほれココ。紅くなってるだろ?」
「…………」

何処?と手探っている銀次に、携帯用の鏡を向けて見せてやると、銀次の瞳が何かに驚いたかのように一瞬見開く。

それに首を傾げながら「どうした」と問えば、「なんでもない」と返された。

見れば不貞腐れたような顔をしている。

「ったく。夏なんだから虫除けスプレーかけとけよ。」
「…むー。」

蚊に刺されたのがそんなに気に食わなかったのか、と携帯していた虫除けスプレーを投げつけると銀次は唇を尖がらして文句を垂れた。

「大体こんなとこでしようとするから刺されるんじゃん。」

その言葉に心が痛む。

夏の夜、野外で身体を重ねようとしているのだから蚊に食われて当然だ。だが分かってはいるが、如何せん仕事がない。

つまりはホテルに行きたくても行けないんだから仕方がない。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ