別天地

□第七章
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――……真人。

……誰だ。俺を呼ぶのは。

――……真人、起きて。

五月蠅い、静かに眠らせてくれ。

――君は、もう諦めてしまうのか?

……そうだ。俺はまだ、何もしちゃいない……!


「う……ここは……。」
意識を取り戻した時、真人は見知らぬ場所にいた。いや、場所自体は覚えがある。幻魔の村で見た夢の中、リヒトと出会った、あのモノクロの世界だ。だが、肝心のリヒトの姿はそこには無い。代わりに映ったのは、地面に横たわる少女の姿。
「エリス!?」
真人は少女の元へ駆け寄った。途中、躰に激痛が走ったが、気にはならなかった。
「エリス、おい、エリス!」
真人が何度呼んでも目覚める兆しは見えない。だが、上下する胸と微かに聞こえる呼吸音が、真人を安堵させた。

「……真人。」
突然、後ろで声がした。振り向くとそこにはリヒトの姿があった。その表情には先程までの柔らかな微笑は無く、それどころか何の感情も映してはいなかった。
「リヒト、お前に聞きたい事がある。」
その言葉にもリヒトの表情は動かず、答え得る質問にならば答えよう、と静かに云った。
「此処は何処なんだ。」
最初にも同じ質問をしたな、とリヒトは云った。
「此処は世界の中心であり、果て。君達の世界の隣にあって決して干渉できない所。そして、僕が唯一、単体で存在できる世界。」
ならば自分達は何故此処にいるのか、その質問にも簡単に答えてくれた。
「この世界の主、つまり僕が許せば干渉は容易い。尤も、普段は精神のみの干渉でも負担は大きいが、」
今回のように肉体ごと世界に取り込むには骨が折れた、とリヒトは苦笑も、憂えも無しに云った。その様子は、作られたもののようだった。
「そもそもお前は、シュイは何者なんだ?」
「運命を司る者と、その守護者である護人だ。」
「そうじゃない。俺が聞きたいのは……」
真人が次の言葉を発する前に、リヒトは分かっている、という風に制した。
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