別天地

□第五章
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「なんか、騒がしくないか?」
 真人達が道無き道を歩いていると、段々ざわめきが聞こえてきた。それは子供の声かと思いきや、その中には何やら叫び声も聞こえた。
「……まさか!?」
 少女は急いで走り出した。傍らの少年も続いて走り出した。真人は何が起こったのかは分からないが、嫌な予感を感じた。


「これは……!」
 漸く少女達に追いついた真人が見たものは、町の者達が各々武器のような物を持って子供を襲う光景だった。
 所々に転がる大人と子供の骸、地面は赤く染まり、まるで地獄を見ているようだった。
「やめて……やめて下さい!!どうしてこんなことするんですか!?何の意味があるんですか!?」
 少し遠くで少女の声が聞こえた。真人は急いでそちらへ向かう。少女は小さな体で、何十人、何百人の大人と対峙していた。その腕には彼女より小さい少年をしっかりと抱いている。その少女の言葉に、一人の屈強な男が答えた。
「どうしてだぁ?そりゃお前達が邪魔だからだよ。何にもできないくせに飯ばかり喰らわれるのは困るからさ」
「そんな……」
 少女の顔が青ざめていく。
「それなのによ、旅人を襲って俺達の食い扶持まで危なくなるのはごめんだしな。だから害虫退治でもしようと決めたんだよ」
 その言葉に真人は衝撃を感じた。こいつらは、何故そうなったかの理由も考えず、表面的な元凶を、まるで虫でも殺すように処分していたのだ。
「こいつら、腐ってる……」
 真人の中に、黒い感情が渦巻いていく。それは段々真人の体を支配し始める。

「……片付けてやる。一人残さず……」

 真人の周りに風が吹き始めた。


 突然、大人達の中から騒ぎ声が聞こえた。どうやら何かが起こったらしい。
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