短編なぺーじ

□リンコ
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「抜き打ちテストなんて、ひどいよね。ぼく、ぜんぜんできなかった」
 へへへ。舌を出して、恥ずかしそうにウインク。
『あらら』
「お昼に、カレーライスがでたよ。とっても楽しみだったんだけど、エビが入ってたんだよ」
 スウくんは、エビがきらいでした。
『すききらいはだめだよ』
「こっそり、残飯入れに入れちゃった。先生に見つかると、食べるまで遊んじゃいけないっていわれちゃうから」
 ぽりぽり。頭をかいて、またウインク。
『あーあ、いけないんだ〜』
「でもでも、今日はすごくいいことがあったんだ!」
 身を乗り出すスウくんの声は、今まで聞いたこともないほどの喜びに満ちています。
『なになに?』
 それは、好きな女の子リンちゃんのことでした。
 今日、スウくんのクラスでは席替えがありました。
 そして、なんとすごいことに、スウくんはリンちゃんのとなりの席になれたのです。
 それはスウくんにとって、お誕生日に最新のゲーム機を買ってもらったときよりも百倍も千倍もうれしいことでした。
 リンちゃんは新聞係なんだ。
 リンちゃんはとってもおさげが似合うんだ。
 リンちゃんの得意な科目は国語と、社会。
 リンちゃんは、リンちゃんは…。
 それから日が暮れるまで、リンちゃんの話で持ちきりでした。
『よかったね』
 サヨナラをいって、全力疾走でおうちにかけていくスウくんの背中を見ながら、リンコは心からそう思いました。
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