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□思春期【オサ蔵】
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大人は卑怯や…


【思春期(オサ蔵)】


「おーご苦労さん調子はどうや?」
「ほんま、暢気やなオサムちゃん」
「焦ったってなーろくな事ないねんで?」
「なんや経験者みたいやな」
「アホ、わしにやってお前と同じ年の時期があったんや」
「せやったら、俺にもオサムちゃんと同じ年の時期がくるんやな…はよ来ればええのに…」

夏の日差しは強い
屋外で練習していれば、そんな事言われなくても嫌というほど実感する。
体中から噴出す汗
額から頬へそのまま顎のラインを辿り
首筋を流れて鎖骨へ

「…あ」

一瞬、あの人の指が身体を撫でた気がした。

気づいたらボールの行方が分からなかった。
ラケットを握り締めたまま、俺はその場に立ち尽くしていた。

「白石?なんや調子悪いんやったら無理せんと休みや」

謙也の声にやっと視界を取り戻す。

あぁ、なにしとるんやろ

コートに立ってまで、あの人に支配されるんは勘弁してほしいなぁ

「オサムちゃーん!!白石調子悪いらしいねん!部室まで付添ってや」
「おー大丈夫か白石……」
「大丈夫や、心配せんでも歩けるから…」
差し出してきた監督の手をやんわりと押し、部室へと歩き始める。

地面を踏む感触はしっかりとある。

「白石のやつどないしたんやろな…もう1週間調子悪いままや」
「白石はん…」

「大丈夫や、銀もはよ練習に戻りや…健二郎、後頼むわ」

別に体調不良やないねん。

なら。

せやったら一体何なんやこの感覚は。
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