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□お年頃【謙光】R-15
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ラケットが舞った
ボールも同じように舞った
なんや
アイツなんでキレたんやろ
【お年頃】
「せやから何度も言ったやないですか」
夏の蝉の声に混じって静かに財前の声が流れる。
俺は暑さのせいかその言葉を文字通り流した。正直この暑い中、用具室の整理なんて罰ゲームや。
「先輩…聞いとります?」
「…スマン、聞いとらんかった」
「…わざとっすか」
「この暑さのせいや…」
用具室は夏の高い気温と湿度で天然のサウナ状態だった。
ただ立っているだけでも肌はしっとりと汗ばみ、目の前の平熱が低い後輩は、やや頬を赤らめてしきりに首筋を流れ落ちる汗に不快感を示していた。
「時間のムダやないですか、あー部長に怒られ…っ」
あまりにも響き渡る蝉の声と
蒸した用具室
少し怒った聞きなれた声
全てが俺にこんな行動をさせる