随筆紺碧
□告白
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こんな時刻に、女の子をひとりで帰す訳にはいかず、カイルは彼女を寮まで送ることにした。
その帰り道、何気なくのぼった話題は、「何故アカデミーに入ったのか」というものだった。
「私、賢者になって色々な人の役に立ちたいと思ったんです」
問われて、クララは恥ずかしそうにそう言った。
「勿論、私ひとりが賢者になったところで、世界中の人たちを救える訳はありません。でも、私がそうすることで、人の役に立ちたいと考える人が一人でも多く出て来てくれれば良いな…って」
こんな考え方はおこがましいんですけれど、と、自嘲気味に笑う。
「カイルさんは?」
問い返されて、カイルは一瞬しまった、と思った。
何故なら、カイルにとってそれは禁忌の質問。
幼き頃の自分が犯した、外すこと叶わぬ首枷。
入学の動機を、カイルはずっと皆に言えずにいた。
カイルがアカデミーに入った理由を知っている者は二人だけ。
無論、その中に生徒は居ない。
だが、彼女になら…話せるような気がする。