随筆紺碧

□お暑いのはお好き?
1ページ/4ページ

「あちい…」
 額の汗を拭いながら、レオンが呟いた。
「精神修行が足りん証拠だな」
 ぐったりと机に伏せるレオンとは対照的に、セリオスは暑そうな素振りすら見せず平然としている。
「…お前、そんなカッコでよく暑くないよな」
 げんなりとした口調で言って、レオンは改めてセリオスを見た。
 普段と変わらない、釦とリボンタイをきっちり締めた制服姿で、その端正な顔には、汗の玉ひとつも浮いてはいない。
 方やレオンはといえば、リボンタイどころか制服の前まではだけ、だらしない姿を晒していた。
「心頭滅却すれば火もまた涼し。ぼくとお前とでは、精神の出来が違うんだ」
「てめェ!」
 何処か得意げなセリオスの口調に、ただでさえ苛ついていたレオンが突っかかる。
「このクソ暑いのに、いちいち癇に障る事ばっか言いやがっ…て?」
 勢い良くセリオスの胸倉を掴んだ処で、レオンは妙な感覚に気づいた。
「アレ?」
 触れた手が、ひんやりと冷たい。
「――っ!」
 ハッとした顔のセリオスが、慌ててその手を払う。
「き、気安くぼくに触るな!」
 今までの落ち着きぶりは何処へやら。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ