随筆紺碧

□うさぎとカレ
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「人間にだって欲情するし、何度交尾しても衰えることはないし、更には相手に逃げられないよう噛み付いたりすることもあるそうだ」
 だから、こんな野蛮な生き物を飼うなんて止せ。
 殆んど息を継ぐ暇もなく言い切ったセリオスの頬には、うっすら汗がにじんでいた。
「……」
 それを聞いたレオンは、苦虫を10匹くらい噛み潰したような顔をしてセリオスを睨んだ。
「おい」
「な、何だ」
 呼び掛ける声がいつもより低くなったせいか、少し動揺してしまう。
「今さっきお前が必死になって説明したうさぎの様子と、一昨日のお前の様子と何処がどう違うってんだ?」
「──ッ!?」
 言われて一瞬固まる。
 確かに一昨日の晩は、久し振りということもあって少し──いやかなり無茶をした気がする。
 そのせいで昨日レオンは遅刻をする羽目になってしまったのだから。

「ぼ、ぼくはこいつらと違う!」
「ほう、違うって言い切るなら、どう違うのか30文字以内で説明してみやがれ」
 いつの間にか小動物を愛でていた客たちの視線が、レオンとセリオスに注がれている。
 いきなり大声でうさぎの生殖能力について語る銀髪の少年と、それに爆弾発言ともいえる台詞で応える紅髪の少年。
 人通りの多い場所で、人目もはばからずこんな会話を交わしていれば当然である。
 色んな意味で目立つふたりなのだが、生憎どちらもそのことに気付いていない。
 一番の問題はそこなのだが。
「ほれ、早く言えよ」
 急かすレオン。セリオスは弾かれたように口を開いた。
「こいつらは手当たり次第だが、ぼくはお前だけだ!!」
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