コラボSS

□未熟な天才たち(邂逅編
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 優雅に降り立った彼女は、隣で驚いていた水夫に乗船チケットを見せ、
「確認して戴けるかしら?」
 と、こともなげに言った。
 水夫はその言葉にはっと我に返ると、少女の提示するチケットを覗き込んだ。
「は、はい…確認いたしました。乗船ありがとうございます」
「よろしい」
 満足げに肯いてから、漸くその少女はこちらに気づいたようである。
 同じ制服を着たラスクに興味が湧いたのか、何処か嬉しそうに近寄ってきた。
「貴方もアカデミーの方?」
「は、はい。今度編入することになった、ラスクといいます」
「そう。わたくしも今度編入することになりましたの。シャロンですわ。覚えておいて」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。」
 同じ学校に通う【仲間】を見つけたことで、少し旅の不安が和らいだラスクを、シャロンと名乗った少女はじっと見つめていた。
「あ、あの…なにか?」
 少女の視線に耐えられなくなって、ラスクは恐る恐る尋ねる。
 整った顔立ちをしているせいか、シャロンの視線はとても鋭いものに見えたので。
「……あなた、わたくしと同い年の割には随分と小さいわね」
「え?」
 確かに、ラスクとシャロンには10センチ強の身長差がある。しかし、それはあくまでも『二人が同年齢であれば』の話だ。
「14歳ならもうちょっと大きくてもよろしいんじゃなくて?」
「え、あ、ボク飛び級だから……アハハ……」
 ラスクの言葉に、シャロンの表情が僅かに硬直した。
「……あ、あら、そう。あなた、見かけによらず優秀なのね」
 それでも高飛車な姿勢は崩さないまま、あまつさえお褒めの言葉を戴いてしまった。
 態度が態度なだけに、素直に喜んでいいのかどうか判断に苦しむ。


 ダメだ、このままではどうもペースが狂う。話題を変えなきゃ。
「あ、えっと、今のって、空中飛行ですよね? 凄いなぁ〜、ボク、初めて見たなあ」
 シャロンは少し驚いたような表情をした。まあ、そりゃ当たり前だよなあ。
「あら、空中飛行は編入試験の課題でしたわよね?」
「え〜と、ボク、ペーパーテストの成績が満点だったから、実技試験受けてないんだよね。エヘヘ」
 照れたように頭を掻くラスクに向かって、シャロンは尚も食い下がる。
「で、でも、飛行術は使えるんでしょ? 飛行術は基本の2段階目だし」
「あ、ボク、魔法って全然使えないんだぁ〜。教えてくれる人いなかったから。でも、その分挽回できるように頑張って勉強して……」
「……じゃあ、飛べませんの?」
「うん」
「全く?」
「うん」
 シャロンは頭を抱えた。
「どうしたんですか?」
「あなた……ほんとに知りませんの?」
「何を?」
「このままじゃ、アカデミーへ行けませんわよ、あなた」
「え? だってボクちゃんと合格通知もらったし……」
「じゃなくて。あなた、この船を降りた後、どうするつもりでしたの?」
「どうって、船に乗ればすぐだからって聞いてたんで、歩いて……」
 シャロンがまたも頭を抱えた。
「はあ…あなた何も知らないんですのね」
 天才少年と言われてきた自分に『何も知らない』と言うシャロンに、軽い苛立ちを覚えたラスクだったが、彼女の次の言葉でそれも吹っ飛んだ。
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