随筆紺碧

□レオンの微妙な事実
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レオンの微妙な事実



 墓穴を掘る人間というものは何処にでも居るものだ。
 大概は1度の失敗で学習し、用心するものだが、中には何度も同じ様な手に引っ掛かって、数え切れない程の墓穴を掘る者も居る。
 このお話の主人公である彼───レオンは後者の人間だった。
 先日、クラスメートたちの前で「お料理名人」だと言う事を暴露してしまった彼は、今日もまたひとつ、みずからの墓穴を掘ってしまうのである。



 その日、アカデミーに小包が届いた。
 包装は至ってシンプルで、表書きから中身は衣類と判明。
 但し差出人や住所は無く、宛名の替わりに貼付されていたカードには、綺麗ではないが読み易い字で、“レンに愛を込めて S”とだけ書かれていた。
「どうしましょうか?これ」
 試験官であるアメリアが問う。
「どうすると言われてもなあ」
 彼女の問いに応えたのはフランシス。
 いずれも困惑の表情を浮かべている。
「レンという名の生徒はうちに居ないし、送り返そうにも、差出人や住所が明記されてないのでは手の打ちように困る」
 どうやら教師陣は、小包の受取人が判らず途方に暮れているらしい。
「筆跡からして、送り主は女性のようだが…」
「せめて宛名だけでも書いていてくれればねえ」
 そう言って小包を手にしたのは、保健医兼非常勤のミランダである。
「あら?」
 不意に、小包を見ていたミランダが何かに気付いたようだ。
「どうかしました?」
「ほら、ここ。何か書いてあります」
 ミランダが指し示したのは、小包の右下。
 隅っこに小さな字で「祝・中級魔術師昇格」と書かれている。
「どうやら進級祝いのようですね…」
「中級…か…」
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