随筆紺碧

□猛き神の禽
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 鳥人。それは鳥と人間との特性を併せ持つ、稀有な種族のひとつである。
 立ち居振る舞いはひとと全く変わらぬが、その羽毛に覆われた全身と、翼有るもの特有の鋭い鉤爪は、まさに猛禽そのもの。
 今日から彼――カイルは、この鳥人族の教師に師事することとなる。

 新しく導入された「入寮システム」によるクラスメイトたちとの別れは、カイルにとってまさに青天の霹靂であった。

 同寮の生徒たちや寮の雰囲気。そして担当教師の教育方針を垣間見た感じでは、以前のクラスのように馴染める自信が、今のカイルにはなかった。
(…こんなことになるのなら、苦手教科の特訓なんてしなければ良かったなあ…)
 心の中で呟いて、カイルは窓を眺めた。
 グラウンドを挟んで向かい側の浮遊島に、かつてのルームメイト、レオンの所属するロマノフ寮が見える。
 互いの苦手教科を克服しようと、毎日教えあった結果が裏目に出てしまったようだ。
(…レオンくんにも、悪い事をしてしまいましたね)
 ロマノフの担当教科を思い出し、カイルはそっと苦笑した。

 と、不意に扉が開き、竹刀を肩に担いだ担当教師が入ってくる。
 そして、彼の猛禽特有の鋭い眼と、カイルの目が…合った。

 慌てて目を逸らそうとしたカイルだが、その厳つい眼の中に宿る暖かい輝きを見、結局それが出来ずにいた。
 一方、彼の方もカイルから瞳を逸らすことはなかった。
 暫く意外そうにカイルを見た後、にやりと不敵な笑みをこぼし、手にした竹刀でばしりと教卓を打った。
 その音に、幾人かの生徒たちが、びくりと肩を竦める。
「諸君、ようこそ我が寮へ。歓迎するぞ」
 言いながら黒板に名を書く。
「俺の名はガルーダ。今日から俺のことを教官と呼べ!」


 ガルーダ。

――それは、遙か東国の神の禽。


 カイルの、新しい学校生活が始まろうとしていた。

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