随筆紺碧

□告白
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「おや?」
 放課後の図書室。閉館するべく鍵をかけようとしたカイルは、隅にひとつの影をみとめた。
「…あ」
 影の主はクララだった。カイルの姿を見ると、慌てて帰り支度を始める。
「すみません、すぐ帰りますから」
「いえ。あと少しでしょう。待ってますから、最後まで読んでください」
 事実読みさしの本は、彼女であればものの数分で読み終える事が出来る程の量である。
 カイルはそう言って、クララの向かいの椅子に腰かけた。
 それを見たクララは、もう一度小さく「すみません」と呟いてから、再び本に目を落とした。
 最初は遠慮がちな視線が、徐々に真摯なものになる。
 どうやら本格的に集中し始めたらしい。
 そんなクララを微笑ましく見つめながら、カイルも鞄から文庫本を取り出し、読み始めた。


「…あの、カイルさん…」
 クララの声で我に返る。
「え?」
「本…読み終わりましたけど…」
「あ、ああ、そうですか…」
 何時の間にか、帰り支度を済ませたクララが目の前に居た。
「すみません。僕の方が夢中になってしまったようで…」
 照れ隠しに頭を掻きつつ、カイルは慌てて戸締りを始めた。
 クララもそれを手伝い、2人がアカデミーを後にしたのは日も沈みかけた頃だった。
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