随筆紺碧
□告白
1ページ/4ページ
「おや?」
放課後の図書室。閉館するべく鍵をかけようとしたカイルは、隅にひとつの影をみとめた。
「…あ」
影の主はクララだった。カイルの姿を見ると、慌てて帰り支度を始める。
「すみません、すぐ帰りますから」
「いえ。あと少しでしょう。待ってますから、最後まで読んでください」
事実読みさしの本は、彼女であればものの数分で読み終える事が出来る程の量である。
カイルはそう言って、クララの向かいの椅子に腰かけた。
それを見たクララは、もう一度小さく「すみません」と呟いてから、再び本に目を落とした。
最初は遠慮がちな視線が、徐々に真摯なものになる。
どうやら本格的に集中し始めたらしい。
そんなクララを微笑ましく見つめながら、カイルも鞄から文庫本を取り出し、読み始めた。
「…あの、カイルさん…」
クララの声で我に返る。
「え?」
「本…読み終わりましたけど…」
「あ、ああ、そうですか…」
何時の間にか、帰り支度を済ませたクララが目の前に居た。
「すみません。僕の方が夢中になってしまったようで…」
照れ隠しに頭を掻きつつ、カイルは慌てて戸締りを始めた。
クララもそれを手伝い、2人がアカデミーを後にしたのは日も沈みかけた頃だった。