コラボSS
□飛べない魔術師(前編
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──遠くで雷鳴が聞こえる。
図書館にいたルキアは、はっとして顔を上げた。
読んでいた本を慌てて閉じ、教室めがけて走り出す。
同じ時 ─ カイルとアロエは花壇の手入れをしていた。
雷鳴に顔を見合わせて、やれやれと溜息をつく。
「レオン!セリオス!!喧嘩の原因は何だ?」
教室に響き渡るフランシスの声。
その声に、二人の男子生徒が電撃の痛みに顔をしかめながら立ち上がる。
「喧嘩じゃねぇよ!」
燃える様な赤い髪の少年、レオンが拗ねたように答えると、
「そう、これは勝負です」
もう一人の銀髪の少年、セリオスも口を揃えた。
何でも勝負したがるレオンと、負ける事が死ぬより嫌いなセリオス。
この二人が同じクラスになった以上、衝突しない訳がない。
どうして先生達にはそんな簡単な事がわからないのか。
息を弾ませながら目に映った光景を見て、ルキアはそう思った。
実際、クラス編成初日から、毎日の様にこの二人は衝突していたのだった。
「…またですか?」
諦めた様な声。いつの間にか、カイルとアロエがルキアの隣に立っていた。
「…二人とも懲りないよねえ」
長い長い小言に、しおらしくうな垂れるレオンとセリオス。
しかし、教室からフランシスが姿を消した途端、
「これで121勝120敗だからな」
「ふざけるな。ぼくが121勝、お前が120勝だ」
と再び言い争いを始める。
「二人共、その辺にしておきましょうよ」
クラス委員であるカイルが、しぶしぶと二人の間に割って入った。
マジックアカデミー初級魔術士クラス。
中級魔術士への昇格試験まで、もう一週間しかなかった。
しかしレオンとセリオスの勝負、いやバトルは、日々エスカレートする一方である。
「あの二人、何とかならないのかなぁ」
心配そうなアロエの声に、
「放っておけば?バカにつける薬なんてないわよ」
素っ気無くルキアが言い放つ。
その割には真っ先に駆けつけたよね。とアロエは思ったが、賢明にも口には出さなかった。