→うた

□音のない森。後
2ページ/15ページ



里への帰路に着いた頃から追っ手の攻撃が多発している。
ウチの部隊との人数の対比を計算していたがそれも阿呆臭くて止めた。


早い話が

『俺達・極少数、敵・めっちゃ多数。』

この一言に尽きる。


応援部隊を向かわせた場所まで後少し。



頼む、

みんな頑張ってくれってば!!























後少し

後少し



何度繰り返しただろう。

気だけが焦り不安を呼び寄せる。



それに感染して廻りの皆もマイナスに意識が下降していってしまうし…。





俺がこんなんじゃ駄目だ!



ザシュッ

前方の敵を刀の錆にして
飛び血もそのままに無理矢理笑みを作った。



笑え笑え笑えッ

まだ余裕
まだイケる



まだ此処で死ぬわけにはいかない

皆の大切な命
しっかりと預かってるんだから…ッ!!



そう自分自身の闇と戦っている間に


『うあぁぁぁっ!!』

「三葉ッッ!?」


後方からの攻撃に
部隊の一人が枝から遙か下の地へ落とされた。


『隊長…ッッ!』
「お前等コレ持って先に行け!
いいか、絶対死ぬなよ!!」
『『はいッ!!』』



奪還目的だった極秘書類を渡し、先程の部員の元へ。


「三葉………ッッ!?」


目に映るは敵に刀を降り下ろされ掛けている部員の姿…




考えるより身体が動いた。


プシュ…っと小気味良い音を立て右目をやられる。


『たっ、隊ちょ…』
「まだ動けるか?」


刀を抜き出し敵と刃を交えながら。


「動けるなら行け!」
『で、でも…ッ』
「俺なら大丈夫。
三葉、命令だ。行け!!」
『は、はいっ!!』


瞬時に消えた彼にホッと息を尽き間合いを取り直す。

ダラダラと流れ出る右目の血が鬱陶しい。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ