→うた
□音のない森。後
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しんと静まる長い通路。
窓から射し込むは
狂い彩いた紅き月。
薄気味悪い其れは
見事なまでに円を描いて空にいる。
ヒタヒタと鳴らしていた脚を止め
目的の部屋へ。
ガラリ…
極力静かに開けたつもりだが軋む年代物の扉は構わずにその音を響かせた。
中にはベッドが一つ。
ツン…と匂う消毒薬が鼻を鈍らせる。
構わずに近寄ればベッドの上に居た病人が寝返りを打つところだった。
頭や体中に真白の包帯を痛々しいまでに巻き付けられて。
右目をも覆ったそれはぐっしょりと血で浸された後が見受けられる。
その複雑な光景についつい瞳を細めてしまい、息が詰まった。
…と眺めていると
「───ん…っ」
不意にその目が開かれる。
ゆっくりと時間を掛けて。
完全に開ききったその目が次の瞬間恐ろしいまでに鋭く光り、
自分を視界に入れるや否や…
「お帰り。」
にっこりと柔らかい笑みに
打って変わっていった……。
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雑木林。
静寂を遮るような刃の交える音。
幾名かの乱れた呼吸音。
『ッ…はっ…』
『くっ…ッッ…』
───ヤバい…
隊員の体力が限界を示してる…
「もう少しだから!皆頑張れ!!」
『『はい…ッ』』
五代目から落とされた暗部としての任務。
先程の飲み会での騒ぎようと打って変わって
生死を分けた状態に立たされていた。
正直言って今の現状じゃ分が悪過ぎる。
嘗めて掛かっていたわけではない、
情報が余りにも少なすぎたのだ。