→ぱられる

□いちご牛乳。
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「此処に居たのか、」



掛かった声に振り向けば
青空の下、黒髪の級友の姿。

もそもそと昼食のサンドイッチを貪る自分の横に腰掛けて堂々とシケモクを味わい始めるコイツは確か『優等生』とかいうカテゴリーに収まっていたはず、
自分の記憶が正しければだけど。



──まぁオトナなんて上辺だけしか見ちゃいないからどうでも良いんだけど。



…っと、そうそう、
『どうでも良い』で思い出した!


「……お前昨日の放課後、エミちゃんとシてただろ。」


ジト目で見やれば素知らぬ顔で空を仰いでやがる。
ほんっと憎たらしい、此の美形。


「さァ、何の事だか。」
「しかも一昨日俺がエミちゃんとちゅーしてたの知ってた上で。何、俺に対する当て付け?」
「別に。ただヤりたかったから。」
「ぅわ、俗慮的ー…。お前いつか後ろから刺されるってばよ、」
「かもな。」
「……あーぁ、エミちゃん可愛かったのになァ、」




──知ってる。業とだ。

同じような事が片手じゃ余る程続けばいい加減馬鹿な俺でも学習するっつの。



自分が誰かに恋をしてある程度良いところまで進む度、何時の間にかコイツに相手をまるっと横取りされる。
その繰り返し。


横取るくせに、かといって相手との関係は長続きした試しのないコイツ。

別にムカつくとか悔しいとかそういうのは無いけれど(好きな子が自分以外の誰かに身を委ねた時点で醒めるし、俺。)
何でわざわざ俺の好きな子ばかり横取りするのかが解らない。


好みが似てる?

いやいやいや。
もしかしてコイツ、自分で探すの面倒なのかな。

えー、それってコイツの恋愛を俺が面倒見なきゃいけない訳?
(じゃなきゃ一向に自分の恋愛が出来そうに無い)



うわぁそれって




「……ちょう面倒くさっ」



ズルズルと吸い上げる紙パックの飲料物。

いちご牛乳って何でこんなに美味いんだろ、
口端に零れた飛沫を舌で舐めとっていた俺の目と鼻の先、不意に落ちる影一つ。




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