→ぱられる
□遠距離恋愛。
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戸締まりをし忘れた。
寝癖で凄いことになったままの前髪もそのままだ。
慌てて電車に飛び乗り
深く何度も深呼吸。
じんわりと滲み出る汗は車内の良く効いた冷房で冷やされる。
思えばこんな無茶苦茶な行動を取るような自分じゃなかったはずだ。
完璧に感化されている自分が面白くて苦笑を漏らせば、
無遠慮に気色悪がる視線を集めて仕舞い。
恥ずかしさの余りにふぃっと背を向けて溜息を一つ。
夕日が沈む様を見ながら揺られていく。
ガタン…
ガタン…
詰まる想いに息苦しくて。
『次は〜__ぁ〜__ぁ〜、
お降りの際はお足元に…』
乗り換え。
新たな車両にまた揺られ
刻一刻と迫る距離。
「…………。」
人の少ない車両にて
つつ想うことは唯一つ。
「──あー…ちくしょ…ッ/// 」
久し振りの再会に誰よりも喜んでいるのは
どうやら自分のようだ。
高まる感情に負けそうで先程から治まらない赤面した顔を隠して。
『もっと沢山会いたいってばよ…』
そう洩らしたお前が愛しくて
ここまで来ちまっただなんて
「お前にゃ言えねェな…」
嗚呼
もうじきお前の元へ
その時お前は
どんな顔をする…?
目の前に、
残像にも似たまざまざと浮かぶお前の姿を想い
後少しの距離に瞳を閉じて身体を委ねた。
END...
REFERENCE MATERIALS ポルターガイスト/椎名林檎