→忍びさん・2
□届カナイ場所。
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『分かっておろうな、渦巻よ…』
──ンな事何回も言われなくったって
「承知しております。」
っての。
ご意見番だか何だか知らねェが
この皺だらけの年寄り共め、一片三途の川見せたろか。
『──然れば……
其方、渦巻鳴門に命ず。今この刻を以ち木ノ葉の里六代目火影の名を襲名せよ。』
嗚呼、畜生
「───御意。」
人生なんて糞喰らえだ
届カナイ場所。
デカデカと
禁煙の二文字が張り出された壁に、うっすらと立ち込めた紫煙の影。
無駄に上質の回転椅子にダラリと身体を預け、俺はヤニ独自の苦味を存分に味わっていた。
(何時からだっけなぁ、この味に慣れたのは…)
記憶が遡れない所をみるとどうやらかなり前からのご様子。
あ〜あぁ、落ちぶれたもんだねぇ渦巻さんも。
起用に口端で噴かしながら手元に残る書類へと手を伸ばした。
文字の羅列がこんなにも睡魔を呼ぶものだと知ったのは火影の名を継いでから。
(綱手のばぁちゃんに言えた義理じゃなかったな…)
昔は良くこの部屋で居眠りを扱いていたあの人を思い、くすりと笑みが漏れた。
……それも
直ぐに自嘲めいた歪みに変わるけど。
「──こんな仕事…」
言葉は故意に続けようとはしなかった。
木ノ葉の里
火影
長……
其れが一体何だと言うのだ
あの昔、べったりと嘘を塗り込んだ顔で
火影になる、と叫んだ挙げ句、
今こうやって有り難くも無いことに叶ってしまった『将来の夢』。
全ての実権をこの手にして尚思うのは
ただ一つ
「──つまんね。」
人を動かすだの
命令やら配慮だの
書面への捺印だの
誰が好き好んでやるもんか。
いらない
いらない
いらない
ンなもん糞喰らえだ。
俺が望むのはただ一つなのに。
なぁ…
何時からだった?
「──この手が
紅に染まらなくなったのは…」
遠い記憶のようで
やるせなくなる。
こんな息苦しい檻の中
上げることのない悲鳴だけがまた一つ消えてゆく……
何のために此処に在る?
俺の存在意義を取り上げないで…
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