オリジナルの小説。
□勘違いの恋人。
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どうしてこんなことになってしまったの?なんて。
どこかのヒロインみたく考えてみたけれど、やっぱり始まりがあるものには終わりがあるのだと素直に思った。
目の前に座る彼はいつもみたく落ち着きがない。
いつもなら、笑って大好きなホットコーヒーを飲んでいるのに。
今いる喫茶店も今日で行けなくなるのかしらと思うと、一ヶ月に一回ぐらいはコーヒーを飲みに来たいと感じた。
ここはコーヒーがおいしいから。
彼の隣には女の人。
前々から紹介したいと言っていた人だろう。
本当は判っていた。
彼がわたしに見切りをつけていたこと。
わたしはいつも愛想がないし、つんつんしてるし、そのくせ寂しがりやだし。
じゃじゃ馬で、口癖は「文句ある?」だ。
わたしが男ならとっくに別れている。
でも、彼の隣に当然のように座っている女の人は清楚。
つんつんしてないし、嫌味な感じもしない。
ニコニコと愛想がよくて、じゃじゃ馬には見えない。
体型は、わたしと似たり寄ったりね。と、そこだけは勝った気分になる。
「あのさ、舞……」
「何?」
来てしまった、終わりが。彼との「恋人」の関係が。
別れ話を聞いたって、せめてこの喫茶店を出るまでは泣かない!
涙なんて見せてやらない。
「前から紹介したかった……俺の妹の由紀子だ」
「へ?」
「だから、妹の由紀子」
彼は不思議そうに言う。
「妹いるって俺、言ったじゃん」
「何じゃそりゃぁぁぁぁぁ!!」
喫茶店の一画で叫び声が上がる。
「初めまして、由紀子です」
そう言って、彼女は清々しく笑った。