図書館

□雨
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雨が降っている。夜に沈む部屋を写す窓が泣いていた。

雨音は嫌いじゃ無い。
「ゃ…んっやぁ」
淫らな僕の声を隠してくれるから。
内壁を探るように動く指に理性を少しづつ奪われる感じ
「嫌?こんななのに?」
「あっ…んぅっ!」
放置されていた熱欲に直に触れられてびくりと躰が震え、生理的に涙がこぼれた。
霞みがかった視界に紅い前髪がちらつく。新井君に触れられると、僕は『いつもの僕』じゃいられない。
「ふっ…ん」
いつもの?
だって、この部屋で殆ど彼といるのに?
解らない
「っ…ゃん」
ずるりと指を引き抜かれた孔が未練がましく疼く。腸液で汚れた指を舐めとる舌をみながらノイズと雨音だらけの頭で懐う。
いつからいつまでが『いつもの』僕?
「っあぁ!」
沈み込んでくる熱に思考を奪われる。
雨音は相変わらず強く僕達を包んでいた。
「な…もと…きだ」
雨音が聞こえる。彼の声も僕の迷いも流すように窓を叩く雨。
「新井君…もっと…おくまで」
なにもかも流されて、解るのは、僕が彼を求めていることだけ。
「っあ…アァ!」
「っ… 」
雨音は好きだ。
全部幻に変えて流してしまうから。
ねぇ、だって、新井君が僕を好きになるはず無いから。頷いたら最後。解けてしまう夢だから。
雨の夜だけ。
甘美に僕を包む夢。

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