図書館

□策士
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夕日の朱 志村

僕にバカ、バカって連呼するけど、君の気持ちに気付かない程鈍く無いんだよ?
苛立ちでもいいから、頭の端で僕のことを考えて…

放課後、中本君と一緒にいるようになってから新井君がますます冷たくなった。
(やっぱり…ね)
「中本君、ここ解んない」
夕日に染まる教室で、机を挟んで二人っきり。三流ドラマみたいなシチュエーションで僕は中本くんを観た。
「あぁ、そこは余弦定理を…」
はずした制服のシャツから朱い印がちらりと覗く。
「あれぇ、虫刺され?」
指を指したら真っ赤になって『まぁ』とか言ってきた。
「顔が朱いけど?どうしたの?」
「夕日のせいです。志村君だって朱いですよ」
窓に手を翳して
「アハハ。ほんとだね」
無邪気を装える自分に吐き気がした。
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