書庫室

□ソレを愛情と呼ぶのなら
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喧嘩の原因なんてお互いとっくに忘れていた。普段は気にも止めないささいな事でさえ相手に一撃与えるべく口を突いて出る。埒の開かない口論にいい加減飽きてきた頃、それでも怒りの静まらない奴の腕に引きづられて、気が付けば固い布団のうえだった。
険呑さをたたえ色を濃くした紫暗の瞳にあきらめにも似た安堵を覚えた。
もちろん苛立ってはいたのだけど。
原因すら忘れた喧嘩ではこれ以上の結果はでないだろうと。やけに冷静な頭で思った。反論するために吸い込んだ息すら貪られて、眩暈と共に苛立ちも投げ捨てる。
沸き上がる快楽に堕ちてしまえば、それはあっけないほど簡単なことだった。
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