竹簡

□なんでもない日
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「贅沢だねぇ」
流麗に綴られる文字を見下ろして凌統は言った。
「と、申しされますと?」
さらりと一筆書き終えたらしい光秀が、首を傾げながら顔を上げた。立っている凌統を座ったまま見上げているので、自然と上目使いになる。
そのどこか愛らしい様に小さく笑い凌統は指差した
「いや、紙がさ」
「紙、ですか?」
得心がいかないらしい光秀に凌統は浚に言葉を重ねる。
「そ、紙。俺らの時代じゃまだ貴重だしね。っていうか、こんな精度の良い物見た事すらないし」
凌統の言葉は光秀は成る程と頷く。
「んで、その贅沢な紙に何を書いてるんです?」
凌統の質問に光秀はにっこりと凄絶な笑みを浮かべた。
綺麗な笑みがどこか黒く、怒りを帯びているのは気のせいだろうか。
「これですか?これは、任務を放棄しがちな凌統殿のために書簡を漢詩に治して差し上げてるんですよ?」
普段は温厚でどちらかというと謙虚な感じの光秀が後光が射しそうな笑顔で皮肉を吐くのは中々迫力がある。刺のある言い回しは、陸遜のそれが移ったんだろう。
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