竹簡

□指先
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「なんだ?」
思っていた通りの冷たい指先に思いがけず触れられて、怪訝な声音で問うてみた。
「…気にするな」

澄んでいるようで底の見えない眼を見上げれば、常とかわらぬ冷静な声が返る。

その姿を見上げなければいけない事を不快に感じつつも、顎の辺りに感じる冷たい指先に嫌悪を抱かない自分としげしげと見下ろしてくる相手の真意を計りかねた。

訝し気に目を眇ると、フッと相手の顔が綻ぶ気配。

「もの欲しそうな顔だな」
「なっ!?」

くっくっと微かに肩を揺らして笑われて。
「馬鹿にしているのか」
「まあな、気にするな」
腹が立つのに、曹丕が楽しげに笑うのでそれでもいいかと思ってしまう。
頬を撫でる指先が心地よくて目をゆったりと閉じた。
この心地良さは卑怯だろ。吐くべき毒は胸の内で息絶えた。
 

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