竹簡

□辿る龍
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覆い被さる男の肌に彫られた龍を細く、しかし女のものではない硬い指がなぞる。
緩慢な仕草で入れ墨を撫でる指が上昇して鎖骨のうえに達した。
「凌と…」
「呼ぶなよ」
情事を交わすにはあまりに硬質な瞳が、甘寧を見上げた。呼ぶはずだった名は凌統、垂れ目がちな瞳と泣き黒子が媚惑的な雰囲気を漂わせている。解かれ滑らかに広がる髪からは、惑わすように香油が薫る。

そこまで惑わしておきながら、名すら呼ぶことを許さない。
その歯痒さは、苛烈に旨虐心を煽る。身体が欲しいわけじゃない。それでも、惑わされるままに甘寧は凌統を乱す。
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