竹簡2
□酔月花
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なにゆえこんな事になっているのかと、霞んだ頭の隅で光秀は思った。
深い口吸いで酸素不足の思考で思い返す。
酒の席で酔って、元親に手を引かれて室に来たのは覚えている。
「何を考えている」
「いえ、なにゆえ元親殿に口吻けられているのかと思いまして」
元親は猛禽を思わせる瞳をすうっと細め、その鋭さに似つかわしくない優しい仕種で光秀の唾液に濡れた唇を拭った。
「誘ったのはお前だろう」
「誘ってなど…」
いないと拒絶するより早く絡みとられた指先に甘い口づけを受ける。
じわりとあらぬ熱が指先から込み上げる様で光秀は背筋を震わせた。
男を誘うような目で介護してくれていた友人を見ていたのかと思うと情けなくて抗うより先に羞恥で身動きが取れなくなる。
「そんな顔をするな。欲を持って見ていたのは俺のほうだ
厭なら拒め、無理強いをするのは好みじゃない」
光秀は動けない。捕えられた手を振り払うには、元親への情が大きすぎる。
はっきりとした拒絶がない事に元親は緩く笑い、光秀へと唇を落とす。触れるだけの口付けが額に、頬に、首筋に注がれる。
「もとちかどの」
薄く開いた唇がやけに煽情的に元親を呼ぶ。それを手前勝手に了承と受け取り、元親は光秀の唇を蹂躙した。