書庫室2
□春眠、暁を覚えず
1ページ/1ページ
麗らかな春日和。
奴は唐突に言った。
「密、もしかして眠いの?」
「なんで」
「だって、密。不機嫌なんだもん」
その不機嫌な顔での沈黙を肯定と受け取ったらしい都筑は、俺を持ち上げると保健管理室まで運んで行った。
軽々と持ち上げられて腹がたったのは、言うまでもない。
「寝ちゃいなよ」
「まだ、勤務時間内だろ」
「気にしない気にしない。ね?」
なにが『ね?』だ。
大体、誰のせいで寝不足だと思っているんだ。
っていうか、お前は眠くないのかよ。
胸の内で悪態はつけるのに
「おやすみ、密」
その都筑の声に、俺の瞼は逆らえない。
あぁ、もう。
新手の催眠術かよ。
春の陽気に包まれて、俺の意識はたんぽぽの綿毛の様に飛んでしまった。
End