書庫室2

□春眠、暁を覚えず
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麗らかな春日和。
奴は唐突に言った。
「密、もしかして眠いの?」
「なんで」
「だって、密。不機嫌なんだもん」

その不機嫌な顔での沈黙を肯定と受け取ったらしい都筑は、俺を持ち上げると保健管理室まで運んで行った。
軽々と持ち上げられて腹がたったのは、言うまでもない。

「寝ちゃいなよ」
「まだ、勤務時間内だろ」

「気にしない気にしない。ね?」

なにが『ね?』だ。
大体、誰のせいで寝不足だと思っているんだ。
っていうか、お前は眠くないのかよ。

胸の内で悪態はつけるのに
「おやすみ、密」
その都筑の声に、俺の瞼は逆らえない。

あぁ、もう。

新手の催眠術かよ。

春の陽気に包まれて、俺の意識はたんぽぽの綿毛の様に飛んでしまった。



End
 

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