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□rejuvenescence
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rejuvenescence
空からは、季節外れの白い欠片が、朝陽を遮りながら零れ落ちて来ていた。
視界の中心にあったのは、清廉な白を拡げたばかりの小さな花々。
ここ数日続いた暖かい陽気に咲いた花に、今日は儚い雪が重なり始めていた。
庭の片隅に溢れる可憐な花は、夜空に散らばった星を思い出させた。


──いつまで、一緒にいられる?
そんな言葉を交わした夜、無数の星は瞬きを繰り返し光を零し、二人を見守っていた。
凍えた冬の風が心の中にも吹き込み、切なく揺らしていたのかもしれない。
だが、いつまでも、などという気休めは口にはしなかった。
彼が求めていたものは、言葉ではないのだから。



家へ入り寝室へと戻ると、彼はまだ眠りの中にいた。
傍へ行きベッドへ腰かけ、顔を隠すように覆われた布団を少し動かし、小さく問いかける。
「密、まだ寝ているんですか」
「…ん…」
返事とも寝言とも取れる声。
普段の彼からは考えられない無防備な寝顔に、自然と表情が綻んで行く。
額に掛かった前髪へ触れると、その手に彼の白い手が伸びて来た。
温もりを帯びた掌に包まれる。
見つめた唇が微かに動いた。
だが声は零れずに、繋がれた手がそっと頬まで連れて行かれる。
触れた肌は、少しひんやりとしていた。
やがて聞こえて来た、規則的な寝息。
この指先へ頬寄せ眠るあどけない姿。
右手の自由を奪われ、温もりに縛られながら。
柔らかく、胸の中を締め付けられて行く。
彼の身体を引き寄せ、緩く抱き締めた。
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