ギフト

□俺は疑う余地もないほどに黒である
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いいえ、都筑はここにいませんが。


あいつの部屋に行ったんですか。
いなかったでしょう。当然です。


だってあいつは、ここにいるから。


誰もいない場所が、一番居心地がいいみたいでしたので。
自分さえいない場所を、ずっと夢見ていたそうなので。俺があいつに出来ることは本当に限られていて、だからこの選択が、あいつにとって最良のものであったことが、何よりも誇りです。
俺も誰かに何かを与えられる存在になれたことが、嬉しくて。


後悔なんて、これっぽっちもしてません。
もう二度と、指先を触れ合わすことさえ出来ないけど、あいつはいつも、肌を通して、俺の意識に触れてきていたから、実感として、あまり変わりはないんです。
それどころか、あいつの意識が、自分のそれにとても近い場所にあることで、常に心強くいられるんです。
ずっと見守ってくれているんです。
今だって、胸の中が、こんなにもあったかい…。

これでもう、半永久的に、俺は都筑のものであり、都筑は俺のものです。
俺の命が続く限り、あいつは俺の中で生き続けるし、俺が死ねば、あいつも死に絶えます。
都筑が一人で死ぬことはまず有り得ません。
俺が、生かすから。


そういえば、お探しなのは、都筑の魂ですか、抜け殻ですか。


ええ、あいつの精神体は、俺の中に取り込んだので、俺が解放しない限り、あなたが都筑に会うことは出来ません。
体の方なら、リビングの窓辺に横たわってるはずですが。


だって、どちらかが残されて一生泣き暮らすなんて、絶対に御免なんです。
どうせ俺たち、もう一人じゃ生きていけません。



俺の、俺たちの選択は、何か間違ってますか。

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