竹簡2
□鳴神と父上様
1ページ/1ページ
雲が低く垂れ籠め、月も見えない夜だった。
一瞬、吹いた生暖かい風があっという間に雷雨に変わる。
「ちゃんと寝ないと、雷様におへそを取られてしまいますよ」
真夜中だというのに、トテトテと光秀の元へやってきた娘へ、一旦、執務を中断しやんわりと諭す。
すると娘は、光秀にぎゅうぎゅうとしがみつき言った。
「ならば、わらわが父上のお臍を守るのじゃ!」
驚く光秀の袖を引き、床へと向かう。
「はよう寝なければ、父上のお臍が雷様に取られてしまうのじゃ!」
「……。そうですね」
ふっ…と相好を崩して光秀は笑った。
娘の愛らしさと、その温もりが呼ぶ睡魔に負けて、光秀は深く寝入ったのであった。
エンド