longU

□結 13話
1ページ/3ページ




5月も終わりに差し掛かる。7月初旬にある他大学のダンスサークルとのコラボイベントに向けて、私達は目下練習中だった。今日は金曜日で、毎週恒例の全体練習日。5限の授業を終えて、城と練習場へ向かう。





「あ〜私も彩さんのチームが良かったな〜」
「いいやん、朱里さんのところも」
「朱里さんは大好きやねんけど。私って可愛い系って感じでも無くない?」
「……そんなことないよー」
「間があった、ねえ!」
「いやいや、でも先輩方が考えてくれたことやからさ、きっとどこか合ってるんやない?」
「それはそうかもしれんけど……彩さんとも話したいし」
「まあ、チーム同じならな」
「夢莉なんか、夢莉って呼ばれてたやん!この前!」
「まあ……チーム同じやからかな」
「ずるいわあ、ほんま」






城の口を尖らせる顔が少し可笑しかった。彩さんは確かにあの日から、私のことを夢莉、と呼んでくれていて、距離がまた縮まったようで嬉しかった。私が彩ちゃんなんて呼べる日は全く来そうに無かったけれど。そんな他愛無い会話をしていると、いつもの場所に到着した。






「おー、城ちゃん夢莉ちゃん、お疲れえ」
「朱里さん、お疲れ様です」
「今日はチーム曲合わせますか?」
「ああ、そのつもりやったんやけど…さや姉が今日来れなくて」
「え、珍しいですね、彩さんがお休みなんて」
「風邪?ひいてしまったんやって。やからチーム練の時は、Aは自主練な。百花も知ってるけど、みんなに伝えといて、夢莉ちゃん」






彩さんが今日ここに来ないことを聞いて分かりやすく落胆してしまう。一週間に一回、約束が無くても彩さんに会えるこの日を私は楽しみにしていた。


「…分かりました」





力無く朱里さんにそう返事をした。彩さんに会えない残念さはさる事ながら、風邪をひいてしまったなんて大丈夫だろうか。一人暮らしで体調を崩してしまったら、大変なんじゃないのかな。幸い私はまだそうなったことがないけれど、きっとご飯を作ることも出来ないだろうし…と彩さんへの心配を心に過らせていたら、百花さんが「始めるでー」と手を叩いた。






「さや姉はおらへんけど、センターのポジション抜きで合わせてみたいねんけど、大丈夫?」
「「はい」」
「じゃあ鏡の前に集まってー」







彩さんがいないそこの空間は、センターというポジションも相まってやけに広く空いているように見えた。
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ