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□結 8話
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「彩さん……すみません、せっかくの休日を」
『ううん。全然いいんやで。』
「でも…彩さんの練習だってあるのに」



彩さんには時間に限らず何もかも頂いてばかりなことに気付く。私も何か出来ることでお返ししなきゃと思い、先日オムライスを一緒に食べた時に話したことを思い出す。




「彩さん、この後はご予定ありますか?」
『無いけど?』
「じゃあ、私の家でご飯食べませんか?簡単なもので良ければ、作ります」
『えーっ、いいん?嬉しい、食べたい』



彩さんが子どものように両手を挙げて喜ぶ。可愛い。



「そんなすごいものは作れないですけど…」
『ううん何でも嬉しいよ』
「頑張ります。もう帰りますか?」
『あ、うん、帰るねんけど、私この格好のまま来てるから、一旦帰って着替えてから夢莉ちゃんの家に行ってもいい?』
「大丈夫です。じゃあ私少し買い物して帰るので」
『ありがとう。19時くらいには行けるかな』
「待ってますね」
『うんっ、楽しみやな〜お腹すいたぁ』



上機嫌な彩さんが最近流行りの邦楽を口ずさみながらレッスン場を出て行った。私なんかの行為にあんなに喜んでくれると思わず、こちらまで心がぽかぽかとする。ていうか何気に聴こえたけど、彩さんって、歌も上手いんや。苦手なこと無いんかな、なんて感心する。
大学のすぐ側にあるスーパーマーケットへ寄って、何を作ろうかなぁと彩さんのことを考えながらカートを押した。誰かのために何かを作ることは初めてだけど、こんなにわくわくするものなんだ、とまた新たな自分を発見するのだった。


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