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□結 8話
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初めてのレッスンがあった次の日。土曜日だからと、お昼前まで寝てしまった。適当にパンを焼いてマーガリンとジャムを無造作に塗って食べる。その傍らで、パソコンに電源を灯して、昨日彩さんから頂いた振りVをぼんやりと眺める。


「ほんまにできるんかなぁ……」



パンを頬張りながら映像を見つめるけれど、パソコンの前で項垂れる。駄目だ、全然踊れている自分が浮かばない。でも、身体を動かしてみないことには始まらない。土曜日なら大学が開いていることを思い出して、適当にTシャツとジャージをリュックに詰め込み家を出た。彩さんから頂いたジャージは昨日着たので、今日は違うやつ。




大学に着いて、ダンスサークルが使えるレッスン場の幾つかある内の一つへと向かう。さすがに土曜日の大学は閑散としているけれど、図書館の横を通るとそれなりの数の学生が机に向かってペンを走らせていた。


中庭や講堂も通り抜けて、レッスン場が入っている体育施設に着いた。守衛さんのところでレッスンルーム使用の手続きをお願いすると、もう誰か使っているとのことで、そのまま通してもらえた。


土曜日なのにやっぱり皆さん練習してんのかな、と少したじろぐ。更衣室で手早く着替えてそこへ向かうと、鏡の前にいたのは髪をまとめて踊る彩さんだった。その姿にしばらく見惚れてしまう。



彩さんに見とれて立ち尽くしていると、鏡越しに彩さんと目が合って気付かれてしまった。



『あー!夢莉ちゃんやん!』
「あ、すみません邪魔して…お疲れ様です」
『ううん、練習しに来たん?』
「はい」
『えらいやん!やっぱり私が見込んだ子やな』


そう言って彩さんに両手で頭をくしゃっとされる。何気ないそんな動作にも私の胸は音を立てるのだけど。


「彩さんこそ、昨日完璧やったのに…」
『まだ振り覚えただけやから。全然落とし込みできてない』
「……すごいですね、やっぱり」
『すごないよ、夢莉ちゃん、どう?V見た?』
「見ました。見て、やばいなって思って来ました」
『はは、そんなに?大丈夫やって』
「いやもうほんとにやばくて。隣で練習しててもいいですか?」
『もちろん。分からんかったら聞いて』
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