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□結 4話
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一人で歩くその帰路は少し物寂しかった。家に帰って、一人で夜ご飯を簡単に作る。間近で初めて見た先輩方のパフォーマンスを思い出しながら、期待と不安で心は複雑になる。私もああなりたい、けど私に出来るかな、どちらも心の中にあって。





無音の部屋は寂しいので適当にテレビを点けた。テレビを流し見ながら、慣れない自炊で作ったオムライスを食べていると、スマートフォンが一つの通知音を鳴らした。







『夢莉ちゃん、一緒に帰ろうと思ったのにもうおらんやった(;_;)』







突然画面に浮かんだ彩さんの名前とメッセージに思わず声が出るほど驚いた。彩さんと連絡先って交換したっけ、と不思議に思って記憶を辿ると、ああ入部手続きの時にグループLINEに入ったからか、と納得した。そこから彩さんがわざわざ連絡をくれたんだと思うと少し胸が躍った。そんなことより、早く彩さんにお返事しないと。





「すみません(>_<)お忙しそうでしたので…」
『ううん、急に連絡してごめんね笑』
「いえ、嬉しいです。今日の彩さんもすごかったです」
『ちゃんと踊れてたかなぁ』
「完璧です。最高でした」
『ありがと(*^^*)でも終わったら夢莉ちゃんおらへんかった(>_<)』
「すみません…次は待っててもいいですか?」
『うん、また一緒に帰ろうなぁ』
「はい、楽しみにしてます」




ステージの上での彩さんを見て、私なんかが気安く関われるような人ではない、と自分を戒めたはずだったのに、本当の気持ちはどうしたってこの人に惹かれている。もっと彩さんと話したい。もっと彩さんのことを知りたい。彩さんとまた一緒に帰りたい。




思うことだけは自由だよな、と自分を許すことにした。彩さんと関われるようになった理由はただお家が近いということのみだけど、偶然に与えられたこの特権に感謝する。
私が彩さんに見合うような存在になれるまでは、この特権を活用させてください、なんて誰宛かも分からない懇願を心の中で呟いた。


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