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□結 3話
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店内に入って、席へと通される。向かい合って座る彩さんの姿にまた緊張していると、彩さんがメニューを差し出してくれた。




『夢莉ちゃん、何にするー?』
「どうしよう。お腹空いてるので何でも食べれます」
『食べれないものとかないん?』
「あんまりないですね。彩さんは?」
『まあまああるな。牛肉とか』
「えっ…珍しいですね。美味しいのに」
『なんか気持ち悪くなんねん。じゃあ何が好き?』
「んー麺類なら全部好きです」
『あ、私も。うちの近くに美味しいラーメン屋さんあるで』
「え、行きたいです」
『今度、行こな。あ、早よ決めなな』




彩さんと次の約束が出来たようで嬉しい。いろいろメニューを見ても決められなくて、彩さんがカルボナーラを頼むと言うのでじゃあ私もそれで、とお願いをした。







『結局一緒の頼むん?』
「…いろいろありすぎて。彩さんと同じのがいいです」
『なんか、可愛いな、それ』
「え?」
『ううん。じゃあ頼むな』






憧れの彩さんとこうやって時間を共に出来ているだけで嬉しいのに、彩さんと同じものを注文することでお揃いのものを持ったかのような気分になっている自分は多分少し可笑しい。彩さんは、パスタを口に運ぶ仕草すらなんだか品格があって、ここはイタリアンレストランでもなくてただのファミレスなのにな、と自分のいる場所を疑うようだった。





『……夢莉ちゃん、そんなに見てたら照れるって』
「え、そんな見てましたか私」
『うん、めっちゃ見てるで。自分の食べな』
「すみません…食べ方も綺麗やなって」
『そうかな?普通やろ』
「何でも綺麗です、彩さんは」
『…褒めすぎやって。ほら食べて』





彩さんに急かされて自分のそれも口に運んだ。



「え、めっちゃ美味しい」
『やろ、美味しいよな、ここの』
「今までで一番美味しい…」
『はは、そんな言う?』



彩さんといると全てが意味を持つかのように特別になる気がする。ただのファミリーレストランのカルボナーラが、そのくらい美味しく感じたのはきっとそのせい。二人でパスタを食べ終えると、ちょうどここが私の家と彩さんの家との中間くらい、と彩さんが言うので、そこでお別れした。家まで帰る私の心は、今日も浮き足立っていた。


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