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□結 2話
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「さや姉遅いで〜!」
「彩さんやっと来た〜!」





さや姉とか彩さん、とか呼ばれるその人が来ると、ただでさえ華やかな場が更に色づくようだった。







彼女がいろんな人から声をかけられる中、朱里さんが大きめの声で呼びかける。





「さや姉ー!こっちこっち!さや姉のファンの子来てるで」
「え、私?」



そこまでは言ってないんやけどな、と思いながら狼狽える。






『え〜ほんまに?また適当なこと言ってるやろ、朱里』
「そんなことないよな?な、夢莉ちゃん」
「え、はい、センター、めっちゃかっこよかったです…」




黒くて大きな猫目が私を映す。




『夢莉ちゃん、って言うん?可愛い名前やな。』
「さや姉ナンパは早いで」
『まだ何もしてへんやん。山本彩です。よろしくね』
「よろしくお願いします」



そうやって挨拶だけすると、彩さんはまた別のところに呼ばれて去っていった。間近で見ると綺麗で可愛くて華奢で白くて、まるで芸能人のようだった。そんな人に名前とは言え可愛い、と言われて少し顔が熱くなる。未成年やから、お酒は飲んでないのにな。




朱里さんによると、彩さんは三年生で、先日四年生が引退してこのサークルの代表に就任されたとのこと。ダンスの技術はもちろん魅せ方や表現力も抜群の彩さんのファンは、サークル内外にも多いらしい。




「代表兼エース、って大変そうですね」
「そうやなぁ。でもさや姉はタフやから」
「すごいですね。センター争い、とかないんですか?」
「はは、それはうちはないなぁ。みんなさや姉のセンターが大好きやし」
「へぇ…」
「そんなガチでも無いからな。さや姉はもっと本格的なサークルでもやっていけると思うけど」
「そうなんですね」
「でもさや姉は勉強にも力入れたい人やから、うちに入ったっぽい」
「なんか、いろいろすごい人ですね」
「うん、みんなの憧れやで」



彩さんの話をする朱里さんは何だか誇らしげで嬉しそうだった。朱里さんの表情や話し振りは、後輩にこんな顔で話をされる彩さんという人が、いかに偉大な存在かということが充分に伝わるものだった。
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