longU

□結 12話
2ページ/2ページ





『なぁ、夢莉…は何でうちに入ろうと思ったの?』
「んー、新歓に行ってみて、楽しそうやなって」
『じゃあダンスしたいとかではないんや?』
「そうですね。何か新しいことしてみたいとは思ってたんですけど」
『そっかぁ』
「あ、でも彩さんがかっこよかったってのも、あるのかも」
『新歓コンパの日の?』
「いやその日ではなくて、新入生歓迎会のときの」
『講堂で踊った時のかな』
「そうです。城と見に行ってて。それを覚えてたので、αの新歓も行ってみようかなと」
『ふーん…それは嬉しいなぁ』
「私なんかが恐れ多いですが…すみません」
『……私なんかが、は禁止やで。』
「あ、はい…」






なんとなく彩さんが私の方に顔を向けて言ってくれた気がして、身体が強張る。彩さんの言葉にも何て返したらいいか分からなくて私の返事が空々しく闇に消えた。少しの沈黙のあと、言葉を続ける。






「でも、彩さんみたいにー…」







踊ってみたいです、と言おうとして彩さんの方を向いてみると、カーテン越しの月明かりに彩さんの寝顔が映った。私の方に身体を向けて、手を丸くして寝息を立てる姿が可愛い。小さな身体で、きっとたくさんのことを抱えているんだろうな、と何故か急にそう思えて、彩さんの肩まで布団をそっと引き上げた。
彩さんってきっと人よりも才能に溢れていて、人よりできることもたくさんあって、それなのに努力も怠らなくて、本当に素敵な人。にも関わらず、この人にどこか脆さを感じてしまうのは私の思い過ごしなんだろうか。







彩さんに励まされてる場合じゃなくて、彩さんの言葉通りに少しでも自分に自信がつくように。この人の隣でそんな姿を見せられるように。そんな明日からの日々に思いを馳せて、私は再び目を瞑った。


次の章へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ