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□結 7話
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初めての練習が終わり、時刻は20時半を回っていた。金曜日の練習終わりは、大抵は学食でご飯を食べて帰るらしい。チームのみんなで行こう、と彩さんが声をかけてくれて、何となく気が重かったけど一人輪を乱して帰る訳にもいかず着いて行く。




学食で私の前に座った、木下さんがにやつきながら話しかけてくれる。



「夢莉ちゃん、頑張ってなぁ。三列目センター」
「いや、無理です、ほんと」
「無理とは言わせんで」
「何で私なんか…」
「まあ、背ぇ高いし、ショートで格好いいし、映えるから」
「はぁ…」
「あとはさや姉のゴリ推し」
「え、そうなんですか?」
「うん。夢莉ちゃんは前にすべき!とか言って」
「そうなんや…」
「期待されてんのよ。ま、三列目やからそんな気負わずにな」
「ありがとうございます…」




木下さんに頭をわしわしされながら激励されていると、彩さんが少し離れたところから口を挟む。



『百花、ゆーりちゃんいじめんといて』
「いじめてないし。それはさや姉やろ」
『はぁ?可愛い可愛いゆーりたんをいじめるわけないやん』




その掛け合いに場が笑いに包まれる。自分が話題の渦中にいることは恥ずかしいのだけれど、そんな空間がなんだか居心地が良かった。私がこの人達のパフォーマンスを乱す存在にはなりたくないな、そう思う。
そして何より、彩さんの期待に応えたい。家に帰ったらまず振り映像をしっかり見直そうと心に決めて、学食の温かい定食をかき込んだ。


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