夢小説

□花火と贈り物
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ジーンジーンと蝉が鳴く、その蝉にそろーりと寄ってふわりとした白い髪の毛が素早く網を蝉に覆い被せた。
ジンジンと鳴き暴れる蝉をその細く白い骨張ったで手で捉えた。
やった!と金色の目が子供のように歓喜の色で輝いていた。
蒸し蒸しと暑い夏季に鶴丸国永は初めての虫取りを経験していた。
「お、取れたな!」と厚藤四郎が後ろから鶴丸の手の蝉を見て言う。
「ああ、これが蝉か!まじまじとよく見るのは初めてだなあ。」と新しく貰った玩具を見る様なうきうきとした目で見る。蝉をじっくり見ようと裏返すとおおっと驚いた声を出した。
「多足をうにょうにょと動かされると案外気持ちが悪いな。」と眺めていた。
「そうか?虫なんてものはだいたいこんなもんだぜ。」それよりもっと足が多くて速く動かすやつもいるんだぜ、その名の通り百足とかな!とにかっと笑った。
「そりゃ驚きだな。でもこれ以上足がわきわき生えていて速く動くのは見たくないなあ。」
「でもこの間食べた海老だって足が多くて虫っぽい見た目だぜ?」
「海老はこんな見た目しているのかい?」と捕まえた蝉を見てプラスチック製の虫かごに入れた。
「だいたいそうだな、足が多くて良く動くし、そうだな、今度厨で行きのいい海老を見せて貰ったらいいんじゃないか?」
「あの美味しい海老がこんな見た目をしているのか、ゲテモノほど美味とは言うもんだな...」と刺身で食べた海老を思い出す。
「ははは、そうかもな!河豚とか見た目はアレだけど美味いしな!」と持ち前の快活さで笑う。
「美味しいゲテモノか、それなら蝉は食べたらどんな味がするんだ?」
厚は蝉かぁ、食った事ないな。それならいっそ食べてみるか?と厚は鶴丸に問いかけた。
それはいい案だな!じゃあ早速こいつを焼く?煮る?揚げる?なりしてみるか!と突拍子の無い提案受け入れを邪気の無い笑顔で言い、虫かごを指先でトントンと叩いた。
厨に向かいつつ「そういえば、この間万屋に花火が置いてあったが、厚は花火を見た事があるかのか?」と問いかけた。
虫は身が無さそうだしパサパサしてそうだから揚げてみるかと厚は考えつつ答える「昔、皆で花火やった事あるぜ、手持ち花火から線香花火にねずみ花火と色々とな。」
「そうなのか、打ち上げ花火はやった事あるか?」
「打ち上げ花火は無いな、なんせ本丸中に響くからな、他の奴らに迷惑だろ?」
「ふーん、ならみんなで花火を見ればいい話じゃないか。」
「そうだなあ...大将が破裂音を嫌がりそうなのがなあ。」と腕を組む。
「打ち上げ花火は破裂するもんなのか。まぁ、嫌かどうかは主に直接聞いてみればいいだろう。」

「という事なんだ。」と虫かごの紐を肩に掛けてゆらゆら揺らしながら鶴丸が執務室に居た。
「打ち上げ花火ですか...幸い本丸の近くには山と海の自然しかありませんのでご自由にどうぞ。」
「いやいや、君が花火の音が大丈夫なのか確認してるんじゃないか。」
「大将は静かな場所が好きだろ?騒がしい所は好きじゃないんじゃないか?」と網を持った厚が主に聞いた。
「いいえ、賑やかな所は嫌いではありません。」といつもの白いワンピース姿の主が机に向かって鎮座していた。
「本当か?大将いつも宴会参加しないし、演練場もあんま好きじゃなさそうだし、てっきり騒がしい場所が苦手だと思ってたぜ。」
「僕も同意見だ。君はあまり騒がしい場所が得意じゃないと思ってたよ。」と近くで書類整理をしていた歌仙が厚の言葉に頷いた。
「そうではありません、人が居る場所をあまり好まないだけです。賑やかな事は苦にも楽にも思いません。
ただ、本丸で打ち上げ花火を行う場合は他の刀にもその事を周知しておいて下さい。
他の刀達が了承したのなら、こちらで花火代を用意しますので後は他の事は自分自身で準備してください。」と自分自身は花火に関わる気はないといつものそっけない物言いで事実だけ述べた。
「花火かあ、季節を感じられて雅だね。」主の態度にいつもの事だと言う様に気にしなさでうんうんとひとりで花火に感慨深さを感じていた歌仙だった。
「大輪の花みたく夜空でパァーッと咲くところがみたいぜ。」と厚が言う。
「じゃあ早速準備だ。まずは打ち上げ場所の確保と打ち上げ花火の購入だ!」
「鶴丸は万屋にまだ行った事が無いだろ?案内してやるから一緒に行こうぜ!」と笑いながら背を叩く。ああ、万屋、どんな所か楽しみだな!と返した。
「では、請求は私の方まで。」とそっけなく言うと厚はそっけないが自分達のやりたい事に手助けしてくれた事に感謝してありがとな、大将!と笑顔で返し、万屋へ向かった。
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