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□すれ違う
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「ゆうりは誰のものなん?」
『…言わなくてもわかるやろ』
「わかんないから聞いてるんやろ!」
優しさの塊のような彼女をこんな風にさせてしまったのは自分のせいだとわかっているけど、つい組み敷かれた体勢なのにも関わらず、強気な口調で責め立ててしまった。
「痛っ…。ゆう…り……!」
私の質問に答えることもなく、無感情にすら感じる冷たい目をしたまま鎖骨に噛み付つかれる。
それから、わかるやろ?と言わんばかりの表情を貫き、一心不乱に身体中に噛み跡を刻んでいった…。
チクッとする痛みにさえも、夢莉から与えられているものだと思うと自ずと満たされてしまう。
私は、紛れもなく夢莉のものだった。
『…っ…好きなのに……』
「えっ?」
『こ、こんなに好きなのに…』
急に夢莉の動きがピタッと止まったと思えば、声を震わせそう小さく発してから目を逸らす。
そして先程産まれた噛み跡のひとつひとつに優しくキスを落としながら、消え入りそうな声でごめんね…と呟く。
すれ違っちゃってたんやな…。
「私も」
愛おしいその丸顔に手を伸ばし、温かい頬を引き寄せ柔らかい唇をたっぷりと時間をかけて重ねた。
『もういっかい』