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□すれ違う
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あーもううるさいな。
私に向けられた嫉妬混じりの苦情を聞くことに耐えられなくなってしまい、ついにその唇に蓋をした。
そしてそのまま流れで押し倒してしまわないと終わらないこともわかっている。
愛が無いわけじゃない。
むしろ愛しかない事をわかって欲しいのに…。
いつからこんな乱暴な伝え方しかできなくなってしまったのだろうか。
「ゆうり…」
ほらね、もうこんな熱い視線に変わった。
そのまま自分本位の抱き方で彼女を快楽の果てへと連れて行った。
最近ツアーが始まり、私は必然的に忙しい日々を送っていた。
一緒に暮らすようになってからも、家の中でもすれ違うことが多くなっていった。
同じ事務所とは言え、その延長線上の仕事はまるで異なったもので、その忙しさも各々のタイミング次第だった。
そんな時夢莉は撮休が続く日があり、会ったことはないけどいつも話に出てくる仲良しの友達と遊びに行くことが自然と増えていた。
いつも帰宅するとリビングからひょこっと顔を出して玄関まで出迎えてくれるていたのに、夢莉の帰りの方が遅い日が多く、それも少なくなっていった。
仕方ないことだとわかってはいたけど、仕事以外の時間は一緒にいたいだなんて私のわがままなんかな。