Book
□忠犬
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今日は夜から家で配信があるからって伝えてるはずなのに…
「あと5分で始まるやん〜!このまま私が映ったらファンの人たちびっくりするやろな!」
心配性の私の不安を余所にQueentetメンバーとYouTubeに繋げる前のZoom上で楽しそうに話し込んでいる。
「ほんまに彩さんと夢莉ちゃんはラブラブですね〜!」
そやろー?なんて満更でもなさそうな彼女を横目にハハっと笑ってその場をやり過ごす。
凪咲、本番始まる前やで?気まずいやんか…。
本番まで1分を切ったところで、もうそろそろ…と視線を送ると、ハイハイと言わんばかりの表情で
「ゆうりに怒られたからまたな〜!」とバイバイしながら戯けてる彼女。イチャイチャすんなやーと野次が飛んでくるけどこれは彩ちゃんのせいだからね。
ここで一旦ミュートにしてもう一度彼女に気をつけるよう促す。
『1時間で終わるから静かに待っててな?』
「わかりましたよーだ」
『あっちの部屋で待っててよ』
「えー、そんなん寂しいやんか〜」
側から見たらこんなの軽い痴話喧嘩だけど、いま私たちの関係が世間にバレてしまうのはさすがにやばいからと釘を刺す。ちぇ〜なんて言いながら寝室に戻っていく後ろ姿は怒られて耳も尻尾も垂れ下がっているワンちゃんみたいで滑稽だ。
「ゆーり、なにニヤニヤしてんねん!始まるで!」
よし子の声で我に返り、いざ配信が始まる。
私たち4人の配信は久しぶりということもあり、メンバー同士でもコメントでも大いに盛り上がった。
その盛り上がりが中盤を迎えた頃、寝室にいたはずのワンちゃんがスーッと顔を覗かせてぴえんの絵文字みたいな顔をして訴えかけてくる。
…あかん、そんなん可愛すぎるやろ。。
そんなワンちゃんを一旦無視して配信に集中する。
もう寂しくなくなっちゃったんかな?終わったらご褒美あげなきゃな…って本物の犬やないかい!と心の中でツッコミを入れてクスッと一人で笑っていたところで
「夢莉ちゃんご機嫌やな〜」とニコニコしてくる凪咲。もう、どこまで見てんねん。