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□証拠見せてよ
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「…っ、寒……」
春の終わり。この日はいつもすぐそこに感じていたはずの体温がなく、風が吹き抜けていくような感覚がしてスッと起きてしまった。……時刻は朝4:37
外から差し込む光に目を細めながら視線の先で風に揺れたカーテンをボーッと眺めていたら、ベランダで煙草を燻らせているシルエットが見えた。
「ゆうり」
『あ、さやかちゃんおはよ』
「何してるんこんな朝早く」
『なんか寝られなくて』
ふーっと最後の煙を吐き出し、短くなった紙煙草を無機質な色をした灰皿に押し当てて火を消す。
夢莉は二十歳になってからというもの、今まで法律で縛られてきたことを肩書きに囚われることなくここぞとばかりに解禁している。
そしてそれを私の見ていないところでこなしていることが多い…気がする今日この頃。
大人になったんやな…。
…なんて一度は大人の余裕をかましてみたけど、煙草は私が吸わないからか、私がお風呂に入ってる間や外出中や今日みたいに寝てる時に気を遣ってベランダでコソコソ吸うし、お酒は私が把握できてしまうほど決まった友達とばかり飲んでいるし…なんてグルグル回る良くない思考に夢莉がストップをかけてきた。
『さやかちゃん。』
「ゆうりは私に隠すことが多いんやな」
一丁前に年齢だけ大人の私がついに悪態をついてしまった。
当然夢莉は何のことかわかっていないようでじっと私の様子を伺っている。