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□溶けていく
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「あのふたり、まーたやってんで」
そんな仲良しのメイクさんとスタイリストさん達の声を余所に私たちは今、広い楽屋の角にあるソファーの上でひとつになっている。
ひ、ひとつになっているというか、彩ちゃんが僕の膝の上に乗って動かないだけで、グループにいた時よりも随分大胆やなあと思いながらも受け入れてしまっている状況デス…。
今日はそんな甘えん坊な彼女のお誕生日ということで、夜からは配信ライブを控えている。
以前いたグループの時とは違ってこんなに広い楽屋を独り占めできるのだと最初の頃は嬉しそうに自慢して来たのに、今となってはひとりでこの広さは落ち着かないからと、私の仕事がない時はこうして楽屋に呼ばれるようになった。…本当は寂しいくせに。
…コンコン、ガチャッ
「彩氏〜!おめでとうやで〜!ってあれ///ゆうりちゃんも来てたんや!」
ってそうやんな、来てるよな、来るというかそれはそうか…なんてニヤニヤしながらブツブツ言ってる三田さんは今日MCで友情出演すると聞いている。
「おー三田ありがとなー!今ゆうりが離してくれへんからまたあとでなー!」
ちょっと…!
軽く抗議の声をあげてみるが、察しのいい三田さんは「ごゆっくり〜」なんてニヤニヤした顔でメイクさん達と雑談しながら楽屋を出ていった。
『離してくれないのは彩ちゃんでしょ!?』
「誕生日の日くらいええやんか〜ゆうりたんのケチ〜」
そう言って鼻歌を歌いながらSNSに届いたファンの人からの祝福メッセージを嬉しそうに読んでいる。
ファンの人もこんな態勢で読んでいるだなんて思ってないだろうな。なんて少しの優越感に浸ってしまう私は変態なのかもしれない。