こころのたまご

□4話
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「ねむ〜い…」
半分程しか開かない目を擦りながら、とぼとぼと何時もの通学路を歩く
周りには誰も居ないため、わたしのイメージが崩れるようなこともないだろう
〈おとはちゃんが悪いの!昨日遅くまでテレビなんて見てるから…〉
「だって歌唄ちゃんがでてたんだもん」
カノンに昨日の行動を指摘され、口を尖らせる
ふと、肩をぽんっと軽く叩かれ、
「おとはちゃん、おはよう」
と声を掛けられる
慌ててしゃんと姿勢を直しにこりとした微笑みを浮かべて振り返る
「おはよう…なんだなぁちゃんか」
見慣れた友人の笑顔に眉根を下げて苦笑すると
「あら、わたしじゃ不満?」
と顔色一つ変えずに聞き返してきた
「違うよ、安心したの」
慌てて否定したものの、さして気にしてもいないようでにこにことしている
「ねえ、今日の放課後なんだけど」
ぱっと何かを思い付いたように顔を上げたかと思えば、「おねがい」とでも言うように両手を合わせ顔を斜めに傾けるなぁちゃん
そのあまりの可愛らしさにクラクラと目眩がするようだったが、続く言葉を思い目を閉じた
「日奈森さん勧誘作戦を実行しようと思うの」
思った通り、日奈森さん関連
「…はいはい、どこまでもついて行きますよー」
「あら思ったよりも素直」
がっくりと肩を落とすわたしに目をぱちくりとさせる
流石にわたしも学習する
下手に言い訳をして逃げるより、素直に付き合っていた方が面倒な事にはならないだろうと踏んだのだ
「じゃ、今日の放課後ね」
そう言ってバイバイと手を振るなぁちゃんにこちらも手を振り返し、教室へと足を踏み入れる

なにやら憂鬱そうな日奈森さんを横目に、自分の席へと荷物を置いたとき
「ねえねえ、おとはちゃんも一緒にどう?」
「今日の放課後、新しく出来た雑貨屋に行くんだけど」
数人のクラスメイトに声をかけられる
今日は良く放課後に誘われる日だと思いながら笑顔を貼り付け答える
「ごめんね、放課後は先約があって」
「また誘って?」と笑いかければ女の子でさえ頬を染めるのだから、わたしのかわいさも大したものだろう
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