こころのたまご

□1話
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「わぁ!あれってガーディアンの…」
「篠原おとはさまだ!やっぱりかわい〜!!」
きゃあきゃあと色めき立つ生徒たちの間を素知らぬ顔でくぐり抜けていく
アイドルたるものこれくらいで動揺して足取りを乱すなんて以ての外
一歩一歩、ゆっくりと、踊るように軽い足取りで
それでも注目されるのに悪い気はしない訳で、ニヤけそうになる顔を必死に隠して足を進める
ガーディアンALチェア、篠原おとはの朝はこうして始まる
〈まぁ〜た自分に酔ってるなの〜?おとはちゃん〉
そう言ってぴょこんと飛び出してきたこの小さな生き物
わたしのしゅごキャラ、カノン
「なりたいわたし」、言わば守護霊みたいなものらしい
最初は驚いたものの、もう1年近く一緒にいるのだ
いい加減慣れるというもの
「酔ってるんじゃなくてアイドルとして当然の振舞いをしてるの」
軽く睨みをきかせるものの何処吹く風、といった様子で
〈そんなこと言って、またオーディション落ちてたの〉
なんて言わなくてもいいことをわざわざ言ってのける
「うるさい」と一言で黙らせ、たまごを鞄に押し込む

「おとちゃん!おっはよー!!」
背中に謎の衝撃を受け思わず前に倒れ込みそうになる
このわたしをこんなトンチキなあだ名で呼ぶのは1人しか知らない
「やや!急に飛びつかないで、危ないでしょ」
そう言いながら振り返ると、思った通り
そこに居たのは同じくガーディアンのAチェア、結木やや
何を隠そうわたしの親友
学年は違うものの、可愛い物好きという共通点で仲良くなって今に至る
「だっておとちゃん見つけて嬉しかったんだもん」とわざとらしく頬を膨らませてぶーぶー言ってるややの頭を軽く小突く
そんなわたしとややを見てまたひとつ小さくきゃあと悲鳴が上がった
毎朝飽きもせずよくもまあそんなに騒げるもんだと一瞥しながらも、話題の中心に挙がった事に気を良くし上機嫌で歩みを進める

また別の方向から黄色い声が上がる
声の中心には見慣れた生徒たち
遠くに見つけた友人たちの姿につい顔が綻ぶ
一歩一歩ゆっくりと、なんて言葉は遠の昔に頭から抜け落ちて輪の中心へと飛び込んでいく
ややも後ろからぴょんぴょん着いてくる
長いサラサラの髪をポニーテールに纏めた少女、なぁちゃんこと藤咲なでしこちゃんがこちらに気づき
「あらおとはちゃん、ややちゃん、おはよう」
なんて可愛らしく微笑んでみせる
Qチェアの貫禄がここに
ああ、なんて可愛い…
「なぁちゃんおはよ」
「おっはよー!」
なぁちゃんに挨拶を返しつつ、中心に居た残り2人に向き直る
「辺里くんも空海もおはよー」
ガーディアンの中では1番年上の筈だがイマイチ締まらないJチェアの相馬空海と、我らがKチェア辺里唯世くん
全員と朝の挨拶を終え、そのまま校舎に向かう
全員揃ったガーディアンに、道行く生徒たちは頬を染め道を開ける
ああ、この特別扱いが堪らないのだ
ガーディアンだけに許されたケープを翻しながら悦に入る
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