小ネタ倉庫
□くるりんちょ【仙道】
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体育館に太陽が強く射し込んでいた。
バスケットゴールを仰ぐと、光が目に飛び込んできて何も見えない。私は体育館のカーテンを閉めるために壁面にあるハシゴを登る。
キャットウォークに上がり、カーテンに手を伸ばすと、横から人が歩いてきた。
「あ、仙道くん上にいたの?」
そこに彼がいたことに気付かなかった。一人しか通れない幅なので、私は後ろに下がってハシゴを降りようとした。
「あー、いーよいーよ」
何がいいのか、と聞こうとすると、すぐ目の前にまで来ていた彼の手が私の両肩に添えられた。そのまま身体を密着され、私の視界は彼の胸でいっぱいになる。
「はい、くるりんちょ」
そう言って、狭い通路で私ごとクルッと半回転する。
「ほら、これで大丈夫。気を付けてね」
ニコニコと笑顔で私に手を振り、彼はハシゴを降りていく。
私は時間差で熱くなった頬を両手で覆って一人呟いた。
「何しに上がって来たんだっけ…」
そして彼はここで何をしていたのだろう。
カーテン、閉めてくれたらよかったのに。